ユーザー事例

贝克休斯,データアナリティクスと機械学習を活用してガス/石油掘削装置用に予知保全ソフトウェアを開発

課題

予知保全システムを開発して,ポンプ設備のコストとダウンタイムを削減

ソリューション

MATLABを使用して約1テラバイトのデータを解析し,機械の故障を事前に予測できるニューラルネットワークを作成

結果

  • 1000年万ドルを超えるコスト削減の見込み
  • 開発期間を10分の1に短縮
  • 複数の種類のデータに簡単にアクセス可能

“MATLABのおかげで,以前は読み取り不可能だったデータを使用可能な形式に変換できるようになりました。これにより,複数のトラックや領域のフィルタリング,スペクトル解析,変換ステップを自動化できるだけでなく,最終的には機械学習技術をリアルタイムに適用して,メンテナンスを実施するのに理想的な時期を予測できます。」

Gulshan Singh, Baker Hughes

容積式ポンプを搭載したトラック。


繁忙期には,贝克休斯の作業員は24時間体制で石油や天然ガスの貯留層を掘削しています。1つの坑井現場では20台ものトラックが同時に稼働することがあり,容積式ポンプで,掘削された坑井の奥深くまで水と砂の混合物を高圧で注入します。150年トラックの総費用万ドルですが,ポンプおよびその部品(バルブ,バルブシート,シール,プランジャーなど)だけで,約10万ドルかかり,優位な割合を占めます。

致命的な摩耗の可能性についてポンプを監視し,故障が発生する前に予測できるように,贝克休斯はMATLAB®でポンプのセンサーデータを解析し,MATLAB機械学習アルゴリズムを適用しています。

贝克休斯の掘削サービス担当のチームリーダーであるGulshan辛格氏は次のように述べています。“弊社でポンプのヘルスモニタリングシステムを開発する際にMATLABを使用するべき3つの理由があると考えていました。1つ目は開発スピードです。C言語や他の言語を使用していたら,開発にもっと時間がかかったでしょう。2つ目は自動化です。MATLABを使用することで、大規模なデータセットの処理を自動化することができました。3 つ目は、MATLAB が提供する幅広いデータ処理技術です。たとえば、基本的な統計解析、スペクトル解析、フィルタリング、人工ニューラル ネットワークを用いた予測モデリングなどがあります。」

容積式ポンプを使用した坑井現場。

課題

現場で稼働中のトラックのポンプが故障した場合,贝克休斯は,業務継続のため,トラックを直ちに交換しなければなりません。予備のトラックを各現場に送る場合,別の現場で使用することができないことから,機会損失費用は数千万ドルになります。バルブやポンプのメンテナンスが必要になるタイミングを正確に予測できないことにより,それ以外のコストも生じます。ただし,頻繁にメンテナンスをすることは,手間がかかるだけでなく,使用可能な部品も交換してしまうことにつながります。一方で,メンテナンス頻度が低過ぎても,ポンプが損傷し,修理できなくなる恐れが生じます。

贝克休斯のエンジニアは,機械が故障するタイミングや,メンテナンスが必要なタイミングを判断できるシステムを開発したいと考えていました。このようなシステムを開発するためには,現場で稼働する10台のトラックに設置されたセンサーから毎秒5万件のサンプルデータを収集し,最大1テラバイトのデータを処理して解析する必要がありました。さらに,この大規模なデータセットから,故障の予測に役立つパラメーターを特定しなければなりませんでした。

ソリューション

贝克休斯のエンジニアは,データアナリティクスを使用して予知保全を行う,ポンプのヘルスモニタリングソフトウェアをMATLABで開発しました。

そして,このソフトウェアを使用して,現場で収集した温度や圧力,振動そして各種センサーからのデータをMATLABにインポートしました。また,MathWorksのサポートエンジニアと協力して,バイナリファイルに保存されたセンサーデータを独自の形式で読み込み,解析するためのカスタムスクリプトを開発しました。

贝克休斯のチームは,MATLABにインポートしたデータを解析し,データから,装置の摩耗や破損に最も大きな影響を及ぼす信号を特定しました。ここでは,フーリエ変換やスペクトル解析を適用した他,トラックやポンプ,流体による大きな動きをフィルタ処理で除去し,バルブやバルブシートに発生するより小さな振動の検出精度を高めました。

収集した約1テラバイトのデータの処理を自動化するために,チームは夜間に処理可能なMATLABスクリプトを作成しました。

エンジニアチームは,圧力,振動,およびタイミングセンサーから取得したデータが,機械の故障を予測する上で最も重要であるということを発見しました。

そこで,MathWorksのサポートエンジニアと協力して,统计和机器学习工具箱™および深度学习工具箱™を使用し,いくつかの機械学習技術を評価しました。この初期評価によって,ニューラルネットワークが最も正確な結果をもたらすことが分かりました。このグループは,センサーデータを使用してポンプの故障を予測するためのニューラルネットワークを作成し,学習させました。彼らは,モデルの構築に使用されなかった現場の追加データを使用して,このモデルを検証しました。

現場のテストでは,ヘルスモニタリングシステムでポンプの故障を予測できることが確認されました。

贝克休斯の予知保全アラームシステム(MATLABを使用して開発)

結果

  • 1000年万ドル以上のコストの削減見込み。“バルブ,バルブシステム,プランジャー,シールといったポンプの内部コンポーネントのメンテナンスや交換を行うだけで,年間収益を大幅に上げることができます”と,贝克休斯のシニアプロダクトマネージャー,托马斯Jaeger氏は語ります。“弊社では,MATLABで開発したソフトウェアによって,全体のコストを30 ~ 40%削減できると見込んでいます。また,現場に余分なトラックを送る必要がなくなることでさらにコストが削減できます。
  • 開発期間を10分の1に短縮。辛格氏は次のように述べています。“MATLABによって,機械学習を含め,期待どおりに解析および処理を行うことができました。低水準の言語では,常に必要なライブラリを見つけ,割り当てられた数週間以内にプロジェクトを完了できるとは限りません。必要とするMATLABのすべての組み込み機能のために,低水準の言語ライブラリを使用して独自のコードを記述しなければならないとしたら,このプロジェクトが完了するのに桁違いの時間がかかっていたでしょう。」
  • 複数の種類のデータに簡単にアクセス可能。辛格氏は次のように述べています。“MATLABのおかげで,複数の種類のデータを1つの解析アプリケーションに簡単にまとめられただけでなく,専用のファイル形式のセンサーデータも問題なく使用できました。」