ローカル5G

ローカル5Gとは

ローカル5G(本地5G,私人5G,プライベート5G)とは,通信事业者(キャリア)に頼らず,企业や自治体などが「自己の建物内」,「自己の土地内」など限られた范囲で利用可能な独自の5Gネットワークを構築する自営無線です。5Gの特徴である「超高速」「多数同時接続」「超低遅延・高信頼」をキャリアに依存することなく局所的に実現します。近年の物联网の普及により,様々なモノ·ヒトがネットワークに接続されるようになっています。目的や接続対象となる机械アプリケーションごとにネットワークに求められる机能やプライオリティは异なりますが,ローカル5Gを导入することにより,使用用途に合わせたネットワークの构筑が可能です。ローカル5Gのネットワークを构筑するには,ライセンスが必要で総合通信局への免许申请が必要となります。また,呼び方や割り当てられる周波数は异なるものの,海外でも同様の概念があり,アメリカ,ドイツ,フランス,イギリスなどでもローカル5Gの活用が进んでおり,いくつか事例が报告されています。

ローカル5Gにより実现される世界

ローカル5G利用のメリット

コスト削减

公共ネットワークへの接続固定费や,有线ネットワークの物理的なケーブルなどのメンテナンス费用,ローカル5Gに机械を接続することによる业务の自动化からコスト削减に系がる场合があります。

セキュリティの担保

ローカル5Gは自エリア内でネットワークを构筑できるため,外部ネットワークと切り离して运用することが可能です。また,SIM认证を行ったり,周波数によってはサービスエリア外への电波の漏泄が少ないため,高度なセキュリティの実现が可能です。更に,ローカル5Gは免许が必要な周波数を使用することもあり,通信品质が安定しています。

このため,自社内の情報が外部に漏洩するリスクを抑えることができ,セキュリティの強化につながります。特に,研究所や工場といった施設内に機密情報が多く存在する企業においては,ローカル5 gによるセキュリティ対策は有効です。これらの企業では,研究内容,生産計画,製造方法,検査内容,出荷までの施設内の設備からノウハウに至るまでが機密事項であるため,守秘義務の順守が徹底されています。そのため,クラウドシステムといった外部ネットワークとの接続に懸念を示す企業もまだ多く,情報漏洩には細心の注意を払っています。現場では情報漏洩リスクの軽減のため,業務プロセスが増え,企業活動が停滞してしまうケースも少なくありません。こういった企業において,外部ネットワークと分離して構築できるローカル5 gネットワークは魅力的です。

wi - fiよりも広範囲をカバーできる

施設内のネットワークとして,従来はwi - fiの利用が一般的でした。しかし,wi - fiの通信範囲は限られた狭い領域であるため,大規模な工場やスタジアムなどの広い場所や,農地や建設現場といった屋外の通信までをカバーすることは困難でした。ローカル5 gであれば,もともと携帯電話で使われることを想定した通信規格であるため,広範囲の通信がカバーできます。そのため大規模な工場や建設現場などの産業用途としてローカル5 gを活用する動きが広がりつつあり,事例も散見されています。

安定性があり通信障害の影響を受けにくい

ローカル5Gでは,无线网络や公众回线などと比较して,低遅延や高速伝送が担保されます。また,帯域を占有できるため,辐辏や干渉の心配がありません。灾害时や大规模なイベントの発生时に,多くのユーザーがキャリアの5G回线を利用すると,ネットワークの辐辏が発生して接続困难になる可能性がありますが,ローカル5Gのように独立したネットワークであればそのような心配はありません。

また,キャリアの5G回线を利用すると,他のエリアの障害の影响を受ける可能性があります。しかし,ローカル5Gは周囲の环境の影响を受けづらく,仮に不具合が出たとしても自前で修理を行なうことですぐにネットワークを复旧できるメンテナンス性があります。

适用エリア·システムを柔软に构筑可能

ローカル5Gのメリットとして,キャリアの都合に左右されず,希望するエリアに柔软に展开できるカスタマイズ性があり,それぞれのニーズ(希望するエリア,低遅延,広帯域,多接続,低消费电力等)。に合わせて,システムを构筑できます。さらに,状况によってアンテナの配置换えなど自身でメンテナンスを行うことが可能です。キャリアによる5Gは商用サービスがスタートしたばかりであり,整备が十分に进んでおらず利用できるエリアは限定的です。特に山间部など人口の少ない地域では,今后も5Gがサポートされない可能性もあります。一般的に,キャリアによる5Gのネットワークは全国に整备されるには1年半から2年以上かかるとも言われています。一方,ローカル5Gであれば,展开するエリアや导入时期を各社,各自治体にて决めることができます。

ローカル5Gの适用事例

建设机械·农业机械の远隔操作

建机

公道の自动运転等と比较し,建机の远隔操作は実现のハードルが低いため,比较的简単に実现できる可能性があります。灾害が発生したような危険な场所での作业や时分割でオペレータが异なる机器を操縦することによる建设の效率化といった用途が考えられ,オペレータ不足の低减にもつながります。

一方で,远隔操作による作业の完成度は低く,人が操縦した场合の60%程度と言われています。その原因の1つが通信性能にあります。従来から使用されていた的Wi-Fiでは,遅延が大きく操作が难しい,长距离を対応していない,帯域制限があり多数の机械を同时に动かせないといった难点がありました。

さらに,工事现场である山奥やトンネル,地下の通信は不安定であり,キャリアのサポートも十分ではありません。例えば,北海道における道路の延伸では,3,4Gすら届いていない场所もあります。建设工期は通常年间スパンであるため,通信环境の整备は非常に重要な役割を占めます。

こういった課題への対処法として,ローカル5 gによる低遅延,広い範囲をカバーできること,同時に多数接続できる通信環境の整備は効果的です。

农机

近年「スマート农业」が嗫かれているように,农业·畜产业従事者の减少の対策として,作业の效率化はますます重要になっています。その一环として,无人状态での自律农作业や,ロボット农机の远隔操作の取り组みが広がっています。その他にも,农业従事者への配虑として猛暑日などでも温度管理された室内から操縦できるため远隔操縦のニーズは高まっています。

建机と同様に,农作业の远隔操作や自动操縦システムの构筑のために安定·低遅延の通信环境の整备が求めらており,ローカル5Gはその一助となります。

监视システム

スマートファクトリー:工場内機器の自動制御,自動運転,故障予知など

工場でも,人手不足が問題となっています。そのため,生産ラインの自動化等による生産性の向上が課題となっています。さらに,近年はニーズの多様化に伴う少量多品種生産が主流となってきており、センサーやロボットなど管理する機械の数が増え、ラインの変更は頻繁に発生します。こういった機器の保守点検や、変更のたびにケーブルの配線を変えることは大きな負荷となってきました。この背景から、大量の機械の情報をリアルタイムに収集し予知保全につなげることや,即时にラインの変更を行うことでダウンタイムの削减につなげることが结果として工场内の歩留まり改善に寄与します。そのため,施设内の无线通信のニーズが高まっています。

一方で,既存の的Wi-Fi等の无线ネットワークは,工场全体をカバーできるほどの広いネットワーク展开や,高いリアルタイム性と安定性,セキュリティの担保について十分とは言えない状态でした。セキュリティを担保し,安定的,高速かつ広い范囲でのネットワークを构筑できるローカル5Gはその解决策として注目されています。

さらに,ローカル5Gによって,工场内の机械から取得される大量のデータをリアルタイムに收集·活用できるようになれば,「デジタルツイン」の実现も容易になります。デジタルツインとは,実际の设备のデジタル上の‘双子’であり,机械の最新の状态を表现したものです。デジタルツインによって机械が故障するまでの时间を予测することや,ライン変更の予测シミュレーションをより正确に行うことが可能となり,異常検知,予知保全によるコスト削减に大きく寄与します。

农业·畜产业:农作物や牛の生育状况の确认,收获时期の见极めなど

农业では,农场を⾃动⾛⾏するロボットや,ドローンからの映像をリアルタイム伝送し,5G基地局内でAIによる分析を⾏うことで,⽣产者や営农指导员がリアルタイムで⽣育状况を把握することが可能となります。

酪農や畜産業においても,ローカル5 gと4 kカメラを活用した牛の健康管理の効率化の取り組みが行われています。従来,牛の健康状態の管理は酪農家が一つ一つ牛舎内を回り,目視で確認していました。4 kカメラを設置し,遠隔で牛の健康状態を管理することで,確認作業の効率化に繋がります。このためには,動く牛を識別するため低圧縮かつ⾼画質の4 k動画を送信する必要があり,wi - fiで4 k動画を複数送信することは困難でした。5 g環境の整備により,この動画送信が可能となります。

防灾·减灾:土砂崩れや川の増水,决壊などリアルタイム监视など

日本では大規模な災害が多く発生しており,災害時に,複数の拠点を同時に,正確に,かつリアルタイムに状況把握することで早期に発見・救助を行うことが可能です。複数拠点の映像・画像をリアルタイムに共有することが求められますが,4 g LTEでやは十分な通信速度が得られません。5G技術の導入により、複数設置された高精細な映像センサーや、ドローン、救助隊員のウェアラブルカメラ等からの情報をリアルタイムに把握することが可能です。

アミューズメント

スタジアム/コンサート会场/游园地:自由视点映像配信など

コンサート会场,スタジアムや游园地,博物馆などに高临场·高精细の映像コンテンツを超高速で伝送し,新たなエンターテインメント体験を提供可能にします。

たとえばVR / AR等と5Gを组み合わせたスポーツ観戦では,スタジアムの観客席の临场感を味わいながら,リアルタイムに竞技情报を表示させることができます。こういった新しいスポーツ観戦体験が注目されてきています。

このように,ローカル5Gを利用したアプリケーションは,人手不足な领域の业务プロセス刷新,效率化や,灾害现场のような危険な地域での远隔作业,状态监视など,现在日本が抱える大きな课题解决にもつながります。

ローカル5Gの活用:队列走行による特殊技能を持ったオペレータの人手不足解消

ローカル5 gの活用:刈り取った作物を正確に収容することで生産性向上

ローカル5Gの规格·导入方法

ローカル5 gでは,4.6 GHz) -4.8 (GHz)と28.2 GHz) -29.1 (GHz)が割り当てられます。ローカル5 gを導入する場合,無線局の免許の申請が必要です。2019年12月の電波法関連法令の制度改正により,28个ghz帯の一部の帯域(28.2 -28.3 ghz)においてローカル5 gの利用が可能です。また,2020年8月17日時点では屋外で利用できる4.8 - -4.9 ghzが新たに追加されました。その他の帯域については,2020年末に制度化される予定です。

ローカル5Gの周波数割り当て

ローカル5 gの利用には免許資格が必要であり,キャリアは無線従事者の資格を取得できず,キャリア以外の企業や自治体などが取得できます。これによりローカルは5克、大企業だけでなく比較的小規模な自治体や団体でも参入がしやすくなります。また,ローカル5Gの無線局への申請は「建物や土地の所有者」だけでなく「建物や土地の所有者から依頼を受けた者」も申請が可能です。

ローカル5Gにおけるシミュレーションの重要性

ローカル5 gでは,より高周波を利用するため,直進性が強くなり,今までの経験をもとにアンテナの設置したりカバレッジを予測することは大変難しくなっています。また,4Gまではキャリアが品質を保ち、メンテナンスを行ってきましたが、ローカル5Gでは、ユーザー主導でシステムへの投資、他の通信システムに影響を与えない事、敷地外に放射していない事、もちろん必要なところに必要な電波が供給されることなどを確認する必要があります。全ての場所や様々な環境下での計測は現実的ではないため、設置時やメンテナンス時にシミュレーションを活用することはシステムの品質向上やコストダウンという点でも重要です。

また,コロナ祸では,现地へ出向いての计测が难しくなっているため,よりシミュレーションの重要性が高まっています。

MATLAB 万博1manbetx/ Simulink环境を使ったローカル5G

MathWorks公司は无线通信设计のためのソリューションを提供しています。5 g工具箱™は5 gの規格に準拠した信号生成,解析を行うことができます。5GToolboxは、提供される全ての関数がホワイトボックス化されており、Cコード生成にも対応しています。ローカル5Gは、それぞれのニーズに合ったシステムを作りこめるため、低遅延を優先するのか、広帯域を優先するのかなど、その時々のアプリケーションにより異なりますが、5G Toolboxから提供された関数や、その関数をカスタマイズすることで、シミュレーションモデルの構築を行うことができます。

PDSCH,PDCCH,CORESETのロケーション表示

また,天线工具箱™通信工具箱™を使用することで,あらかじめ标高や建物を考虑した电波伝搬のシミュレーションが行えるため,事前にアンテナ配置の最适化も検讨することができます。

建物を考虑したレイトレーシング

送信機と受信機間の洛(视线)プロット

さらに,相控阵系统工具箱を使用することで,ビームフォーミングによるアンテナの指向性の制御なども検討できるため,より低消費電力で,効果的なシステムの構築が可能です。

アンテナアレイによるビームフォーミング

ローカル5Gを设置する独自の环境を模拟してレイトレーシング解析を行いたい场合には,CADデータのフォーマットのひとつであるSTLファイルで実现して顶けます.CADツールを使用して作成された工场内やオフィスなどのお手元のデータを活用したり、RoadRunnerで構築した自動運転のシナリオをCADファイルとして出力後、stlファイルに変換できれば、Communications Toolboxを使用することで、電波伝搬の環境として利用して頂けます。

路跑で作成したシナリオ

STLファイルを環境として使用したレイトレーシング解析の例

参考:无线收发器OFDM